元はてなの広告営業 mtakanoの日記

はてなビジネス開発本部 営業部 部長の高野です

何のためにはたらくか

とある尊敬している、お世話になっている方と飲んでいた時。かなりの困難に立ち向かうお仕事をされていて、なぜそんな敗けるかもしれない戦いに自分を追い込むのですか、と聞いた。「自分の娘が働き始める時までに社会を変えておきたい」と仰っていた。

それは僕の娘が誕生する少し前、約三年前のことで、かっこいいなあ、僕もこれから娘が生まれたら何か変わるのかな、と思っていた。

 

それから無事に娘が産まれ、日々の娘の世話に追われたり、育児における困りごとを調べたりしているうちに、自分の視界には、子どもの貧困や、ワーキングマザーの大変さといったニュースが入るようになってきた。

 

そんな関心も抱えつつ仕事をしていたところ、ブロガーのkobeniさんにこのような記事を書いてもらえることになった。

next.rikunabi.com

 

kobeniさんと連絡を取る中でお話に出てきた「育休世代のジレンマ」という本を読んでみて衝撃を受けた。僕は女性が妊娠した時や子どもが産まれた育休明け後、どんなに苦労して働いているかに考えが及んだことはなかった。

子育てしながら仕事をバリバリこなしていく「スーパーウーマン」になるか、やりがいのある仕事を諦めて「割り切って」仕事をするしかなくなるか。その2者でもお互いに対立が始まっていくという。

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

 

 

それから社内の女性に、「働く」ということについて聞いてみたところ、

「女性が普通に働くことは難しい、それが当たり前だと思っていた」
「自分の人生を設計していく上で、仕事はどう続けていけばいいのか」
「スーパーウーマンの記事も、理想は持っていたほうが心が豊かになるので、夢を抱かせてくれるものとして読む」

といった話がでてきた。普段みんな楽しそうに働いていると思ったけれど、そんなことを考えていたのか、と驚いた。

僕は全く何も見えていない。

 

そのようなことを、懇意にしていたアイデムさんにふとお話したところ、一緒に女性の働き方について考えていくオウンドメディアをやってみよう、と仰ってくれた。

 

それから具体的なオウンドメディアの提案をすることになった。個人的興味もあって色々な本を読んだ。

 

提案の日の朝は、自分の気持ちを高めるためにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「know your enemy」やエレファントカシマシの「パワー・イン・ザ・ワールド」、マリリン・マンソンの「the fight song」なんかを繰り返し聴いていた。35を過ぎたいい歳したおっさんのくせに。

 

そうして紆余曲折を経て、「りっすん」というメディアが出来上がった。

www.e-aidem.com

提案はしたものの、動き出してからの実際の編集、進行は全て社内の女性にお願いした。「りっすん」というメディア名、コンセプトとなる言葉はアイデムの女性の担当者さんが決めた。

いい歳してレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなんか聞いているおっさんには、こんな暖かくて優しい言葉はでてこない。

そういえば、アイデム内で稟議を通してくれた担当者さんも男性なのだが、全ての社内外調整を終えて、進行にあたっては身を退かれた。

 

それにしても情報発信をすることは責任が伴うことだと日に日に感じるようになった。誰かの心を良い意味でも悪い意味でも動かしてしまう。マーケティングという目的によって本当に大事なことを見失い、信憑性のない記事、誰かを傷つける記事は許されないだろう。

でも、出来上がったこの記事を読んだとき、覚悟のようなものを感じたので、今のメンバーならきっと大丈夫だと思う。

www.e-aidem.com

 

僕も一歩離れた立場にはなったものの、ずっとこのメディアの助けとなるようなことができれば嬉しい。すでに色んな人達の想いがつまっている。

 

結局、男性も含めた「働き方」自体を考えなおさなければいけないのだと思う。色んな人達が色んな価値観を持つことが許されている社会なら、色んな働き方もあるはずだ。

せっかく働くのなら、自分の目の届く範囲だけでも、社会のためになることを考えたい。メディアを立ち上げる提案をしたのみで大げさだけど「自分の娘が働き始めるときまでに社会を変えておきたい」と思うようにはなった。